事例

【直方市】
医薬品卸と連携した骨粗しょう症予防の取り組み

医薬品卸企業と連携して取り組んだ、骨粗しょう症予防の啓発活動において、大きな成果をあげた直方市様にインタビューしました!

2024.03.28
骨粗しょう症予防を通じて、
「人生100年時代が来ても、直方市民が思い通りに過ごせる社会」
の実現を目指す

令和4年10月に立ち上げられた「直方鞍手(のおがたくらて)医師会骨粗しょう症対策推進協議会」
から、骨粗しょう症予防への取り組みを強化した直方市。翌令和5年1月には、医療品の卸売販売を
行う株式会社アステムとの連携協定が結ばれました。

1年が経ち啓発活動の成果は、予想をはるかに超える検診受診率の大幅アップとして表れました。
成果の立役者である直方市役所 市民部 健康長寿課 健康企画係の杉山様と健康推進係の尾形様、
連携協定を結んだ株式会社アステム 三吉様に協議会の立ち上げや取り組みの内容、今後の展望
などのお話を伺いました。


■医師の提案を受けて始まった協議会。流れをつかむように、連携協定の締結へ
「のおがた豊かな人生100年現役応援」を立ち上げた経緯・背景を教えてください。

杉山様
:始まりは、令和3年の12月です。直方市では骨粗しょう症の検診を行っていますが、全国・
県下と比較しても、受診率が低い状態にありました。危機感を覚えた市内の整形外科の医師の提案
がきっかけで、直方市と医師会・歯科医師会・薬剤師会を含めた「直方鞍手医師会骨粗しょう症対策
推進協議会」が立ち上げられました。
三吉様:私たちがお目にかかったのは、ちょうど協議会設立後の頃でしょうか。窓口でご挨拶させて
いただいた後に、杉山様からご連絡をいただきました。
杉山様:そうですね。いただいた名刺をもとに実績を拝見したところ、呉市さんでの先進的な取り組み
が目に留まりました。ぜひご提案いただいた連携協定のお話を進めたいと思い、連絡させていただき
ました。

受診者数増加を目指して、初の大型イベント開催へ
「のおがた豊かな人生100年現役応援」を実施するにあたり、どのような取り組みを進められたの
でしょうか。

杉山様:まずは、数値目標として「検診の受診者数増加」を掲げました。受診率の低さは関心の低さと
つながっていますから、啓発活動として、ショッピングモールでのイベント開催や駅舎周辺でのライト
アップを実施しました。
尾形様:イベントでは医師会の先生方の講演と併せて、測定会や体操教室を行いました。測定会は当日
に整理券を配って対応したのですが、おかげさまですぐに配り切ってしまうほどの盛況ぶりでした。
三吉様:昨年(令和5年)10月のイベントでは、弊社からも測定器の手配や検査のサポートをするなど、
ささやかながら協力させていただきました。
杉山様:スケジュールの管理や資材面では、本当にお世話になりました。私たちにイベント実施の経験
がほぼなかったので、アステムさんがイベント構成に携わってくださったことがありがたかったです。
知見やノウハウももちろんですが、医師会や医療関係者の方とも面識がおありだったので、事前準備
や当日の運営にもかなりバックアップしていただきました。
三吉様:日頃から医師や医療関係者の方々とコミュニケーションを取る機会が多いので、橋渡しに
なれたなら光栄です。今回、直方市様と一緒に開催させていただき、初めて実施したとは思えない、
すばらしいイベントになったと思います。私個人としても、非常に自信につながりました。



受診環境を整えるため、病院をまわり検診受診機関を増やす取組みを実施
イベントの他にも取り組まれたことはありますか。

杉山様
:これまで、骨粗しょう症検診を受診できる医療機関は2施設しかありませんでした。私は、
その数が少ないということに疑問を持ちました。そこで、もっと気軽に受診してもらえるよう、病院を
まわって医師の方々に個別検診の実施をお願いしました。その結果、受診施設を7施設に増やすことが
できました。

―通常業務以外に、このような、医療機関をまわるという取組みをすることはハードルが高いと思います。その行動力が、事業の成果にもつながっていますね。

事務職配置の強みを生かして、水面下で庁内の理解を集めた
事業を進めていく上で難しかった点や、工夫されたことはありますか。

尾形様
:どこの公的機関でもそうだと思いますが、予算の確保にはやはり苦心しました。協議会でも
強く要望されましたが、叶えることが難しく、心苦しかったです。
三吉様
:他の自治体様でお話を聞いていても、苦労されると伺うことが多いですね。事業を行うには
予算が必須ですが、どのように確保されたのでしょうか。
杉山様:直方市役所では、保健事業の部門にも私のような事務職が配置されているのが特徴です。
過去の異動の中で財政部門や企画調整部門の職員ともつながりがあったので、予め事業の説明を
しておいたり反応を確かめたりしながら、予算の確保に努めました。
尾形様:予算の重要性に加えて、専門知識の習得や施策提案にも時間がかかります。保健師と事務職で
それぞれの得意分野を活かしながら進められる今の体制はありがたいですね。



数値目標は大幅アップ!受診者のフォローアップに向けて、より詳細な分析を進めたい
現在は、どのような分野に力を注がれているのでしょうか。

尾形様:骨粗しょう症の検診については、春に1回、冬に1回、計2回の個別勧奨通知をそれぞれ未受診
の方全員に出したところです。実はすでに取り組みの成果が表れていて、1月時点で受診率が11.4%
になりました。国の平均が10%程度、県の平均が5%程度なので、平均値を上回ることができました。
まだ増える余地もありますし、次は目標としている15%を目指したいですね。
※追記※
下表の最新版データによると、2024年3月19日現在の受診率は「15.8%」と目標値を達成した
とのことです!


 ※直方市独自に集計した参考値です

杉山様
:今年度の新たな取り組みとしては、骨粗しょう症治療中断者対策です。骨粗しょう症は、
治療を中断する人が5年で50%とかなり多いです。中断者を見つけるためには、レセプトや健診
データを分析する必要があります。私どもでは専門知識が不足しているため、アステムさんに
ご紹介いただいたデータヘルスに強い企業さんのお力を借りています。
三吉様:今後のために、より分析を得意とする会社をご紹介させていただきました。集めたデータ
から、また新しい取り組みができるのではないかと思います。

得た経験を元に横展開することで、保健事業全体の前進へ
―今後の展望を教えてください。

杉山様
:骨粗しょう症への取り組みで得たノウハウを、しっかり横展開していきたいと考えています。
ひとつは、糖尿病の合併症で腎臓の機能が低下してしまう糖尿病性腎症の予防ですね。ほかにも保健
事業のDX化を企画しています。こちらも、アステムさんとの連携を考えているところです。
尾形様
:人口構成の変化などに伴い、市に求められる保健事業も変わってくるだろうと考えています。
まずは、自分が担当している事業から、課題を意識して解消に向けて、率先して動いていきたいと思い
ます。

市民のニーズをくんだ行政サービスのために、熱意を持ってやり通していく
―最後に、取り組みを考えている自治体様へのメッセージをお願いいたします。

尾形様:取り組みを通して、いろいろな人とつながる大切さを強く感じました。外部との連携に
ハードルを感じる方もいると思いますが、連携を通じて、市の立場では手に入りにくい最新の情報や
前進するきっかけをたくさんいただきました。熱意を持って取り組んでいくことで、今までにない景色
が開けると思います。
杉山様:我々が主体的にイベントの実施や受診施設の増加に携わったことで「今までの事業はやって
いる『つもり』になっていて、全然できていなかったな」と身に染みました。行政に必要なのは、
市民の潜在的なニーズを、正確にくみ取って事業化していくことだと思います。加えて、自分たちが
やりたいことばかり追うのではなく、医師や医療関係者などの協力してくれる方々の思いもくみ取り、
目線合わせをしていく重要性も感じました。熱意を保ち続けるのは難しいことではありますが、
私の場合、続けることができたのは、”骨粗しょう症健診の受診率で全国1位になりたい“という思い
があったからです。私たちの取り組みが、ほかの方の参考になれば幸いです。
三吉様:引き続き、お力添えができればと思います。ありがとうございました。



右から
株式会社アステム 北九州営業部 地域アクセス・流通政策担当 課長 三吉 晋介 様
直方市 市民部 健康長寿課 健康企画係 係長 杉山 茂雄 様
直方市 市民部 健康長寿課 健康推進係 保健師 尾形 陽子 様
株式会社アステム 北九州営業部 筑豊支店 支店長 田中 広作 様
※所属名は、インタビュー当時(2024年1月29日)の名称です。

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