【宮崎市】
HPVワクチンの大幅な接種率向上!男子接種も市の独自補助を実施!
大幅な接種率向上を達成した取組み内容と、九州の市としては初めて男子接種に対しても補助を開始した宮崎市にインタビューをしました。
2026.02.24
HPVワクチンの接種率向上に向けた数々の取組み
―ワクチン接種に対するハードルを下げた活動とは?―
宮崎県は、かつて子宮頸がんの罹患率が全国ワースト1位という状況に直面していました。この危機感から、宮崎市はHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種の積極的な推進に全国でも類を見ない規模で注力。市長のリーダーシップのもと、「中学校での出前講座」や「男子への接種費用補助」といった先進的な取り組みを展開しました。
その結果、全国水準を大きく上回る高い接種率を達成し、予防医療の最前線を走っています。本記事では、この取り組みを推進する宮崎市 健康管理部 健康支援課の杉本様、植田様に、成功の要因、継続的な推進のための工夫、そして今後の展望をお伺いました。
<ご参考>前回のインタビュー記事
【宮崎市】HPVワクチン接種率向上の取り組み(自治体編)
https://www.brdg-square.com/articles/detail/56
■初回接種率 目標値を達成!多角的な啓発が生んだ驚異的な数字
―昨年度(令和6年度)までの取り組みの結果、接種率はどのような結果だったのでしょうか。
接種機会を逃した方が対象となるキャッチアップ接種については、令和7年3月31日時点で初回接種率が70.3%に達し、市の目標値であった70%をクリアすることができました。
※宮崎市の接種率の計算式は以下の通りです。
接種率(%)=接種数/接種対象者✕100
また、定期接種については、全学年合計では47.86%ですが、私たちが重視する高校1年生相当年齢(定期接種の最終学年)では66.53%という高い接種率を達成しました。国の標準的な接種年齢である中学1年生も43.35%と、早期からの接種が進んでいます。
―この高い接種率を達成できた、一番大きな要因は何だとお考えでしょうか。
どれか一つだけということではなく、様々な角度からのアプローチを続けた結果だと思います。
キャッチアップ接種においては、「対象者の目に触れる回数を増やす」ことを徹底しました。複数回の個別通知に加え、YouTube、Instagram、テレビCM、SNS広告など、多岐にわたる媒体をフル活用しました。
さらに、接種へのハードルを下げるため、夜間接種や商業施設での日曜接種を実施しました。仕事や学校等でなかなか接種できない方には、こうした機会を確保したことで、接種の増加に繋がったと思います。
また、定期接種においては、「出前講座」の力が非常に大きいと感じています。令和5年度から中学校で実施したこの講座を受けた生徒が接種を受けたことで、早い段階から接種率が高くなっている傾向があると考えられます。
■意識改革の要:保護者と生徒の心を動かした「出前講座」
―出前講座は3年目ということですが、特に工夫された点、また、参加者からの反応はいかがでしたか。
出前講座は、宮崎市内の公立中学1年生の男女を対象に実施しています。市と宮崎県産婦人科医会の先生方、そして民間企業(アステム社)の連携によって実現しました。
講座受講後のアンケートでは、保護者からの「来年度も続けてほしい」という回答が94%に上りました。この数字は、正しい情報を医師から直接聞くことの重要性を示していると思います。
出前講座には生徒だけでなく、保護者にも同席してほしい旨を伝えています。参観日に合わせて実施する学校もありました。このおかげで、子宮頸がんの罹患ピーク世代である30代、40代の保護者の方々にも、子宮頸がん検診の受診率の低さといった現実も知ってもらうことができました。
また、アステムさんが作成した動画を見ていただくようにしています。これは、子宮頸がんでご家族を亡くされた遺族の動画です。当事者の手記やご家族のコメントなどを目にすると、病気のリアルさと深刻さを「自分ごと」として受け止めてもらうことができます。その結果、皆が真剣に話を聞き、性的接触といった言葉や子宮といった言葉が出ても、揶揄(やゆ)することなく真面目に向き合える雰囲気ができているのだと思います。
宮崎市内の中学校における出前講座の風景
※出前講座を実施するまでの経緯は、以下の記事もご参照ください。
<ご参考>出前講座等の啓発活動に自治体とともに取り組まれている、宮崎県立看護大学 川越靖之先生のインタビューも掲載しています。
【宮崎市】 HPVワクチン接種率向上の取り組み(医師編)
https://www.brdg-square.com/articles/detail/53
―昨年度は個別通知を年4回も行ったということですが、どのような工夫や内容を発信されていたのでしょうか。
まず保護者の方の目に留まるよう、開く前の部分に、「機会を逃したら自己負担ですよ」という期限に関するメッセージや、「お子様に知らないままにさせないで」といった家族で話し合いを促す保護者向けのメッセージを記載しました。
メッセージの内容は、キャッチアップ接種補助期間の延長が決まるなどの状況変化に合わせて毎回変えており、単なる事務連絡ではない、行動を促す工夫を凝らしました。宮崎市 健康管理部 健康支援課様よりご提供 令和7年度通知物の一例
■国を待たない先進的な一歩:男子接種の驚異的な成果
―今年度から、新しく男子のHPVワクチン接種に対する補助を始められたと伺いました。接種率はどれぐらいでしょうか。
今年度から独自予算で男子のHPVワクチン接種補助を開始しました。他国では当たり前となっている男子接種ですが、国内でこの補助を始める自治体はまだ限られているようです。
高校1年生相当年齢の初回接種率は、当初目標としていた4%を大幅に上回り、10月末時点で22.0%という非常に高い水準を達成しました。この数字は、過去の出前講座で啓発された生徒や保護者たちが、「ようやく補助が出た」と動き出してくれた結果だと思います。
接種した保護者やご本人からは、「もっと早くやってほしかった」「忙しいので臨時接種会場はないか」といった前向きな要望をいただくことはありますが、ネガティブな反応はほとんどありません。全額助成の存在が大きな後押しになったと感じています。
―予算的な制約の中で、男子接種補助や出前講座の予算を確保するのにご苦労はあったのではないでしょうか。
定期接種とは違い独自の予算が必要なため、予算確保は容易ではありません。
しかし、HPVワクチン接種を今急いで進めていかなければならないという認識が、庁内で共有できていることが大きいです。
キャッチアップ接種の終了に伴い、啓発予算は縮小しましたが、「出前講座」の予算と、定期接種の個別通知(全学年対象)の費用は、引き続き確保しています。
■次世代へつなぐ使命感:今後の目標達成とさらなる連携に向けて
―今後の取り組みの目標をお聞かせください。
女子の定期接種については、令和11年度末に中学1年生の初回接種率70%の達成を目指します。
男子接種については、来年度高校1年生の初回接種率30%を目指します。
今後もこの取り組みが続けられるように、自治体職員として使命感をもって、そして、協力してくださっている医療者側とはさらなる連携を取りながら続けていきたいと思います。
左から
宮崎市 健康管理部 健康支援課 感染症対策室 副室長 杉本正樹 様
宮崎市 健康管理部 健康支援課 感染症対策室 主任主事 植田大聖 様
(株)アステム 宮崎営業部 地域アクセス・流通政策部 部長 生駒栄人 氏
(株)アステム 地域アクセス部 地域アクセス課 係長 清水澄人 氏
※所属名は、インタビュー当時(2025年11月25日)の名称です。
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